財団の設立趣旨

都市近代化が進んでいる京阪神の諸都市では、最近、テレビジョンの難視聴世帯が増加している。この受信障害は、建築物の高層化、カラー受像機の普及などにつれて、著しくなっており、さらに、テレビジョン放送のUHF使用を考えるとき、急増することが予想される。

 

従来、辺地では村落単位の公益的な共聴組合が多数生まれて、難視聴解消に役立ってきたが、都市部の難視聴は辺地と異なり、世帯数が多いうえに、視聴者層が多様であって、その発生原因も複雑である。これらを解消するためには、簡易な施設と運営組織ではなくて、高度な技術による有線放送施設を設置し、公益的な組織によって、合理的な利用条件で運営されることが必要である。

 

また、社会の進歩発展は情報、知識に対する一般の要求の増大をいっそう促進することになるが、そうした情勢の中で、有線放送施設は、テレビ難聴解消のほかに、自主放送の可能はもとより、情報伝達の新しい手段としての大きな役割が期待されることは、すでに専門家の指摘するところである。

 

したがって、この活用のしだいでは今後の社会にすくなからず貢献するものとみられるので、その多目的利用のための調査、研究は必要かつ有意義であると考える。

 

とくに京阪神地区は、文化的にも経済的にもなお一層一体化が進む地域であるので、単一の組織によって、効果的に運用することが好ましい。

 

以上の事情から、われわれ関係者一同は、ここに財団法人を設立して、京阪神地区における難視聴を有線によるテレビジョン放送の再送信で解消し、さらに、有線放送施設の有効な利用について調査研究などを行い、各種の利用を図り、もって公共の福祉の増進を図ることとした次第である。

 

 

(財団設立趣意書(昭和45年4月)から)